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恐怖心霊現象 怪談百物語 第2話 子育て幽霊

むかしむかし、ある村に、一軒のアメ屋がありました。
ある年の夏の事、夜も遅くなったので、アメ屋さんがそろそろ店を閉めようかと思っていると、
トントントントン
と、戸を叩く音がしました。
「はて、こんな遅くに誰だろう?」
と、アメ屋さんが戸を開けてみますと、一人の女の人が立っていました。
「あの、アメをくださいな」
「あっ、はい。少々お待ちを」
アメ屋さんは、女の人が持ってきたうつわに、つぼから水アメをすくって入れました。
「へい。一文いただきます」
「ありがとう」
女の人はお金を払うと、消えるように行ってしまいました。

その次の日。
今日もアメ屋さんが戸締まりをしようと思っていると、また戸を叩く音がします。
「あの、アメをくださいな」
やはり、あの女の人でした。
女の人は昨日と同じようにアメを買うと、スーッと、どこかへ帰って行きます。
それから毎晩、女の人は夜ふけになるとアメを買いに来ました。
次の日も、その次の日も、決まって夜ふけに現れては、アメを買って行くのです。

さて、ある雨の夜。
この日は隣村のアメ屋さんが訪ねて来て、色々と話し込んでいたのですが。
「あの、アメをくださいな」
と、いつものように現れた女の人を見て、隣村のアメ屋さんはガタガタ震え出したのです。
「あ、あ、あの女は、ひと月ほど前に死んだ、松吉のかかあにちげえねえ」
「えっ!」
二人は、顔を見合わせました。
死んだはずの女の人が、夜な夜なアメを買いに来るはずはありません。
しかし隣村のアメ屋は、間違いないと言います。
そこで二人は、女の後をつけてみることにしました。

アメを買った女の人は林を抜け、隣村へと歩いていきます。
その場所は、
「はっ、墓だ!」
女の人は墓場の中に入っていくと、スーッと煙のように消えてしまったのです。
「お、お化けだー!」
二人はお寺に駆け込むと、和尚さんにこれまでの事を話しました。
しかし和尚さんは、
「そんな馬鹿な事があるものか。きっと、何かの見間違いじゃろう」
と、言いましたが、二人があまりにも真剣なので、仕方なく二人と一緒に墓場へ行ってみる事にしました。
すると、
オンギャー、オンギャー
と、 かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえてきます。
声のする方へ行ってみると、
「あっ、人間の赤ん坊じゃないか! どうしてこんなところに?!」
和尚さんがちょうちんの明かりをてらしてみると、そばに手紙がそえられています。
それによると、赤ん坊は捨て子でした。
「手紙によると、捨てられたのは数日前。それから何日もたつのに、どうして生きられたんじゃ?」
ふと見ると、あの女の人が毎晩アメを買っていったうつわが、赤ん坊の横に転がっていたのです。
そして、赤ん坊が捨てられたそばの墓を見ると。
「おお、これはこの前に死んだ、松吉の女房の墓じゃ!」
何と幽霊が、人間の子どもを育てていたのです。
「なるほど、それでアメを買いに来たんだな。それも自分の村では顔を知られているので、わざわざ隣村まで」
きっと、自分の墓のそばに捨てられた赤ん坊を、見るに見かねたにちがいありません。
和尚さんは心を打たれて、松吉の女房の墓に手を合わせました。
「やさしい仏さまじゃ。この子は、わしが育てるに、安心してくだされよ」
こうしてお墓に捨てられた赤ん坊は、和尚さんにひきとられました。
それからあの女の人がアメ屋さんに現れる事は、もう二度となかったそうです。

引用:福娘童話集
http://hukumusume.com/DOUWA/index.html

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