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恐怖心霊現象 怪談百物語 第12話 幽霊の手紙

江戸の下町に住む中村大作(なかむらだいさく)という人が、
家の手伝いをしている十介を連れて用事の為に千葉へ出かけていきました。
ところが次の日の夜、江戸でその大地震がおこったと知った大作は家族の事が心配になり、
十介に用事を頼むと、自分は途中で江戸へ引き返していきました。
十介は無事に用事をすませると、自分も大急ぎで江戸に戻りました。

江戸に入ってまもなく、へとへとになった十介はお寺のへいにもたれて座り込むと、
つい、ウトウトしてしまいました。
「ややっ。すっかり、ねむってしまったな」
ハッと気がついた十介は、目をこすりながら立ちあがろうとすると、
どこからか青い灯が近づいて来て、十介の前で止まったのです。
「誰だろう?」
と、思いながら見あげると、
ちょうちんの灯に照らし出されたのは、足のない若い娘の幽霊でした。
「出た! 幽霊じゃ!」
腰を抜かした十介がブルブルと震えていると、
娘の幽霊が口を開きました。
「恐れないでください。わたしはあなたのご主人の、
中村大作さまとゆかりのある者の娘です。
どうか、これをご主人さまにお渡しください。よろしくお願いします」
娘の幽霊が言うので、十介が下を向いたまま手を差し出すと、
手のひらに何かが乗せられました。
十介が顔をあげると、
手のひらには一通の手紙と一枚の小判がありました。
小判はきっと、用事を頼んだ十介へのお礼でしょう。
気を取り直した十介は、また夜中の道を走って、
やっと主人の家へたどりつきました。
十介はひと息つくと、
若い娘の幽霊と出会って手紙と小判を預かった事を、主人の大作に話しました。

幽霊は大作のよく知っている友だちの娘で、三千という名でした。
三千は父親が旅に出ている留守に、地震で命を失ったのです。
その事を父親に伝えてもらいたくて、大作に手紙をことづけたのでした。
十介が預かった手紙には、
《地震にて、むなしくあいはてそうろう。
後の事、よろしくお願いもうしあげまいらせそうろう。三千より》
と、書かれていたそうです。

引用:福娘童話集
http://hukumusume.com/DOUWA/index.html

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