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恐怖心霊現象 怪談百物語 第13話 人食い婆とおつなの頭

むかしむかし、あるところに、おつなという女と、その婿が住んでいました。
ある日、婿は仕事で遠くへ行く事になりました。
「なるべく早く戻って来るから、しっかり留守を頼んだぞ」
婿が出かけたあと、おつなは一人でなわを編んでいました。
するとそこへ見知らぬおばあさんがやって来て、おつなの編んでいるなわをいろりにくべたのです。
「なっ、何をするんだよ!」
おつなが止めても、おばあさんは知らん顔です。
そのうちに燃えてしまったなわの灰を、おばあさんはムシャムシャと食べ始めたではありませんか。
「・・・!」
おつなはびっくりして逃げ出そうとしましたが、体が震えて立ちあがる事も出来ません。
「ヒッヒヒヒ、そんなら、明日の今頃、また来るでな」
おばあさんは灰だらけの口でニヤリと笑い、外へ出ていきました。

次の日、おつなは怖くて仕事も手につきません。
おばあさんが来る頃になると、カヤの実を三粒持って、二階のつづらの中へ隠れました。
やがて、おばあさんがやってきました。
「おや、いないのか?」
しばらくいろりのまわりを歩いていたおばあさんは、階段を登り始めました。
おつなは、おばあさんを驚かそうとして、
カチン!と、カヤの実を噛みました。
おばあさんは、その音にハッとして足を止めます。
「はて、何の音かな?」
それでもおばあさんは、階段を登ってきます。
おつなはもう一度、カヤの実を口に入れて、
カチン!と、噛みました。
「何だか、嫌な音だね」
でも言うだけで、足を止めようともしません。
足音が、どんどん近づいてきます。
おつなは、怖くて怖くて息が詰まりそうです。
(お願い! あっちへ行って!)
おつなは思いきって最後のカヤの実を噛んで鳴らしましたが、もう、おばあさんはびくともしません。
「ふふふ、におうぞ、におうぞ」
おばあさんは二階に来て、そこら中をかぎまわりました。
(ああ、もう駄目!)
おつながつづらの中で手を合わせた時、がばっと、ふたが開いたのです。
「おおっ、いた、いた。今日は、お前を食いに来たよ」
おばあさんはおつなを引きずり出すと、足からムシャムシャ食べ始めて、あっという間に体のほとんどを食べてしまいました。

でも不思議な事に、おつなは死なずに、まだ生きていました。
「ああ、うまかった。残りは明日にとっておこう」
おばあさんは頭だけになったおつなを戸棚の中へしまうと、ゆっくり家を出ていきました。

次の日の朝、そんな事とは夢にも知らない婿が、家に戻ってきました。
「おつな、今帰ったぞ。・・・おい、おつな!」
いくら呼んでも、返事がありません。
「おかしいな」
家中を探しても、やっぱりいません。
「それにしても、腹が減った」
そう思って、なにげなく戸棚を開けて見ると、何とおつなの頭が棚に乗っていて、うらめしそうにジッとにらんでいるのです。
「うえっ!」
びっくりした婿が転がるように逃げ出すと、おつなの頭がコロコロと転がってきて、婿の胸にかぶりつきました。
婿は仕方なく、おつなの頭をかかえたまま外へ飛び出しました。
すると、おつなの頭が言ったのです。
「お前さん、わたしをおいて逃げるつもりかい?」
「と、とんでもない! お前は、おらのかわいい女房だ!」
「そんなら、わたしにごはんを食べさせておくれよ」
婿は仕方なく、人に見えないようにおつなの頭を抱いて宿屋へ行き、二階に部屋を取って料理を運んでもらいました。
おぜんの前に座ったとたん、おつなの頭がおぜんの上に飛び降りて、
「さあ、食べさせておくれ」と、口を開いたのです。
いくらかわいい女房でも、気味が悪くてがまん出来ません。
「かんべんしてくれ!」
婿はいきなりおつなの頭におはちをかぶせて上から帯をまきつけると、そのまま階段をかけ降りて、いっきに外へ飛び出しました。
「お客さん、何事ですか?」

驚いた宿屋の人が追いかけようとしたら、二階からおはちをかぶせられた女の頭が転がってきます。
「お、お化け!」
そう言ったきり、宿屋の人は気を失いました。
おつなの頭は宿屋から転がり出て、婿を追いかけました。
「た、た、助けてくれー!」
婿は叫びながら、必死に走り続けます。
どこをどう走っているのか、まったくわかりません。
「お前さーん! お前さーん!」
おつなの声が、すぐ後ろから追ってきます。
「もうだめだ!」
はっと気がつくと、目の前に菖蒲)とヨモギの生えた草むらがありました。
婿は夢中で、その草の中へ倒れ込みました。
すると、どうでしょう。
草むらの前まで追ってきたおつなの頭が、くやしそうに、
「くそっ! 菖蒲やヨモギさえなかったら」
と、言って、元来た方へ転がっていったのです。
「やれやれ、助かった。それにしても、菖蒲やヨモギが魔除けになるのは本当だったんだな」
婿は、ほっとして立ちあがりました。
そして菖蒲とヨモギをたくさんとって帰り、家の窓や戸口にさしておくことにしたのです。
おかげで人食い婆も、おつなの頭も、二度と家へはやってきませんでした。

引用:福娘童話集
http://hukumusume.com/DOUWA/index.html

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